肥満症の定義・診断基準とは?ガイドラインに基づいた予防・治療法

美容・健康

高血圧や糖尿病・脂質異常症など、さまざまな健康被害を引き起こす可能性がある「肥満症」。ポッコリお腹が気になっている方も多いのではないでしょうか?

肥満症は、ただのポッコリお腹と思われている人も多いと思いますが、肥満症が最初の駒となり、それが倒れる事で様々な病気が連鎖する事をメタボリックドミノと言い、高血糖・血圧上昇・脂肪肝を第一段階の「症状」に、それが糖尿病や、高血圧症などの病気となり、最後は、がんや心疾患・脳卒中など、命に関わる病へと繋がる引き金になります。

そこで今回は、肥満症のガイドラインに基づいた予防・治療法をご紹介!

肥満症とは?

肥満とは、体内の脂肪組織が過剰に蓄積した状態の事を言います。肥満は、糖尿病や脂質異常症・高血圧症・心血管疾患などの生活習慣病を始めとして、命に関わる病へと繋がる引き金になります。そのため、肥満の予防・対策は重要な位置づけとなります。

肥満症の分類:内臓脂肪型肥満・皮下脂肪型肥満

肥満を体脂肪の分布から分類すると、「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」に分けられます。

近年、内臓脂肪型肥満は、糖尿病・脂質異常症・高血圧といった生活習慣病が要因になり、動脈硬化による病気を早期に発症させることが多いということが分かってきました。一方で、皮下脂肪型肥満はこうしたリスクが高くないことが明らかになっています。

そのため、すべての肥満が減量を中心とした治療を必要とするわけではなく、医学的に健康障害をきたす率が高い肥満(肥満症)を判別し、これを1つの疾患として捉え改善していくことが重要であります。

肥満の判定

日本肥満学会によると、肥満は「脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、体格指数(BMI=体重[kg]/身長[m]2)≧25のもの」と定義づけられています。判定結果は、下記の通りです。

BMI(ボディ・マス・インデックス)の計算方法

BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)

日本肥満学会

日本肥満学会の定めた基準では、18.5未満が「低体重(やせ)」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」で、肥満はその度合いによって、さらに「肥満1」から「肥満4」に分類されます。

BMIが22になるときの体重が標準体重となっていますが、これは統計上、肥満との関連が強い糖尿病・高血圧・脂質異常症(高脂血症)に最もかかりにくい数値とされています。25を超えると脂質異常症や糖尿病・高血圧などの生活習慣病などのリスクが2倍以上になりますが、直ちに医学的治療を開始する必要があるとは限りません。30を超えると高度な肥満としてより積極的な減量治療を要するものとされています。

標準体重の求め方

標準体重 = 身長(m) × 身長(m) × 22

肥満の分類:内臓脂肪型・皮下脂肪型

肥満は、脂肪が蓄積する部分(ウエスト・ヒップ)による体型からの分類と、内臓脂肪の度合いによる内臓脂肪を加味した分類という2つの観点から分類を行います。

体型からの分類(上半身肥満・下半身肥満)

体型からの分類では、脂肪蓄積部位(ウエスト)を測定し、男性は85cm・女性は90cmを基準に分類されます。

内臓脂肪を加味した分類

内臓脂肪を加味した分類では、腹部CT検査によって内臓脂肪面積を計測し、内臓脂肪面積が100cm2を基準に分類されます。

肥満症の定義・診断基準

肥満症の定義

日本肥満学会では、肥満症は以下のように定義づけされています。

日本肥満学会による肥満症の定義

肥満症とは、肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測される場面で、医学的に減量を必要とする病態をいい、疾患単位として取り扱う

肥満症の診断

日本肥満学会では、肥満症は以下のように診断されています。

引用:病気がみえる

すべての肥満が治療の対象となるわけではなく、肥満の人(BMI≧25)の中でAに示す健康障害(2型糖尿病・脂質代謝異常・高血圧など)が既にある人で、Bに示す方法で判定(ウエスト周囲計測で男性≧85cm・女性≧90cm以上、腹部CT検査で内臓脂肪面積≧100cm2)された内臓脂肪型肥満の人が「肥満症」として診断されます。

なぜ太る?肥満のメカニズムと原因

肥満の主な原因は、食べ過ぎと運動不足です。内分泌の異常などが原因のこともありますが、割合としては少なく、大半は生活習慣に問題があります。基礎疾患が存在し、これによって肥満をきたす場合を二次性肥満といい、その例としてクッシング症候群などがあげられます。

健常人は、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが取れており、体重が一定に保たれています。しかし、過食によって、摂取エネルギーが過剰になったり、運動不足によって消費エネルギーが少なくなったりすると、相対的にエネルギーが過剰となり、貯蓄エネルギーが増えてしまいます。その結果、脂肪が増え、体重が増加します。特に中高年になると若い頃と比較して代謝が落ちていますので、体重が増えやすくなっています。

また、肥満の原因に大きく関係しているのが、食事中の糖質です。糖質を摂って血糖値が上がるとインスリンが分泌されます。インスリンは、エネルギーである糖を身体のさまざまな部分に取り込む働きをしていますが、中性脂肪としても貯蔵するため過剰に摂りすぎると内臓脂肪が増えてしまします。その結果、糖尿病や高血圧など生活習慣病の原因につながります。

肥満の予防と治療

肥満症の治療は、まずは健康障害の原因である肥満の解消が重要です。肥満は、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回り、過剰分が体脂肪として蓄積されることが原因として引き起こされます。そのため、肥満症の主な治療法は、「食事療法」・「運動療法」・「行動療法」の3つが大切になります。減量のため食事だけを制限してしまうと、重要な筋までもが減少してしまい、基礎代謝の低下などにもつながってしまいますので、食事療法と運動療法の併用が重要です。

(1)食事療法

①極端な食事制限・短期間の無理なダイエットは避ける

肥満の予防・治療には、エネルギー摂取(食事)と消費(運動)のバランス改善が大切になります。つまり、摂取エネルギーを減らすことと消費エネルギーを増やすことです。しかし、極端な食事制限は逆効果です。1か月に体重の5%以上を落とすと、身体は急激な栄養不足で飢餓状態に陥ってしまいます。その状態で元の食生活に戻ると、エネルギー源である脂肪を蓄えようとして必要以上に体脂肪を作ってしいます。また、短期間の無理なダイエットは、本来落としたいはずの脂肪ではなく筋肉や骨密度などが落ちているケースも多くあります。つまり、極端な食事制限による無理なダイエットは「筋肉量が減り、脂肪はさらに燃えにくくなる」という痩せにくい身体を作ってしまいますので避けましょう。

②朝食抜き&夕食偏重はNG

絶対に避けたい習慣が「夕食偏重」です。サラリーマンやOLなどに多く見られる朝食抜き、昼そば・パスタ・夜ドカ食いと言った所謂ピラミッド型の食生活が、一番体重が増えてしまう原因です。

また、朝食抜きもNGです。空腹時間が長くなると身体が飢餓状態に陥り、次に摂取する食事が吸収しやすくなってしまうだけではなく、脂肪が燃えにくい身体になってしまい、ダイエットには逆効果になります。

③副菜からゆっくり食べる

ベジファーストといって、食事の最初の5分間で食物繊維の多い野菜をゆっくり食べると、内臓脂肪の増加につながる血糖値の上昇を緩やかにしてくれる効果があります。

④夕食は夜9時まで!もしくは分食

夕食は、遅くても夜9時までに済ませるようにしましょう!人の身体は、夜の9時以降になると休息モードに切り替わり、エネルギー源である脂肪を蓄えようとします。そのため、深夜の食事で糖質を摂りすぎるのは、内臓脂肪がつく最も大きな原因になってしまいます。

仕事などでどうしても夕食が遅くなってしまう場合は「分食」がおすすめです。夕方におにぎりなどの軽いものを食べておき、深夜の食事は糖質を控えて野菜類を多めに摂るようにしましょう。

⑤空腹感・小腹が減ったと感じたら歯磨き

満腹や空腹を感じるのは、胃ではなく脳です。小腹が減ってしまうのは脳への刺激が少ない時に起こるニセの食欲で、5分以上続かないと言われています。そのため、その5分をいかに乗り切るかがダイエット成功への鍵です。

おすすめは、小腹が減ったと感じたら歯磨きをする事です。口を動かして咀嚼と似た動きをすると満腹中枢が刺激されて食べた気持ちになれます。他にも、家の掃除など食べる以外の行動をして気を紛らわせましょう。

⑥料理は大皿ではなく1人分に取り分ける

大皿から直接食べると、自分の食べる量が把握しにくく食べすぎにつながってしまいます。そのため、大皿を使う場合でも別の小皿に分けるなどして1人分を取り分けて食べるようにしましょう。

(2)運動療法

家でも簡単にできる脂肪燃焼術!

溜まった体脂肪を燃やすには運動も必要です。脂肪を燃やすのに効果的なのは、ランニングや水泳などの有酸素運動ですが、毎日仕事が忙しくて運動の時間を思うように取れない場合は、「通勤時に早歩きする」「一駅分歩く」「エスカレーターやエレベーターではなく階段を使う」「ちょっとした待ち時間に踵上げをしてみる」など、できる範囲で身体を動かすことから始めてみてはいかがでしょうか?また、家の中で段差昇降やステップ運動などを行いましょう。

(3)行動療法

食事は習慣であるため、毎日食事をする食卓に太る原因が潜んでいます。そのため、食卓をひと工夫する事で無理のない健康的なダイエットを目指しましょう。

①食べ物のストックは視界に入らない所へ保存する

食べものやお菓子が目につくところにあると、ついつい手が伸びてしまいます。そのため、戸棚の中などに片付けて視界に入らないようにしましょう。食べ物に自然と手が伸びるというクセを断ち切る事が、食べすぎを防ぐコツです。

②ストレス解消法を知る

ダイエットにとってストレスは大敵です。ストレスを感じると、脳からコルチゾールというホルモンが出してニセの食欲を引き起こしてしまいます。ニセの食欲は空腹感の原因になりますので、極力ストレスは溜めないように発散しましょう。

③記録をつけてモチベーションを保つ

ダイエットが長続きするコツは、ダイエットが「ストレスにならない」事です。体重計に毎日乗ったり、万歩計をつけて歩いたり、数字を見る生活をする事でダイエットの意識が続きやすくなります。

まとめ

肥満症は、高血圧や糖尿病・脂質異常症など、さまざまな健康被害を引き起こす引き金にあります。ただのぽっこりお腹と考えず、適切に対処しましょう!

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