私たちの健康に関わる睡眠。睡眠に問題があり、いびきをかいている人は5人に1人と言われています。皆さんも心当たりありませんか?しかし、たかがいびきと侮ってはいけません。いびきが悪化すると「睡眠時無呼吸症候群」という睡眠時に無呼吸状態となり大変危険です。健康に悪影響だけでなく、放っておくと高血圧や心筋梗塞など命に関わるに危険がありますが、患者数は徐々に増加傾向にあります。
そこで今回は、いびきや睡眠時無呼吸症候群についてご紹介します!
睡眠時無呼吸症候群について
「睡眠時無呼吸症候群」とは、眠っている間に気道が狭くなり呼吸ができなくなる症状の事で、10秒以上の呼吸停止が1時間に5回以上みられる病態の事を言います。
現在の患者数は、推定900万人。予備軍を含めると2200万人以上になるといわれています。主な症状は、日中眠気に襲われる、疲れが取れないなど。また、高血圧のリスクも無呼吸によって高まると言われています。さらには、不整脈や心不全・狭心症・心筋梗塞など心臓にも影響を及ぼし、放っておくと突然死につながる危険もあります。
症状
睡眠時無呼吸症候群の症状は、夜間(睡眠中)の症状と、日中の症状に分けられます。
夜間(睡眠中)の症状は、激しいいびき・無呼吸・異常な体動・夜間の頻回の覚醒・尿失禁・呼吸性アシドーシスなどがあります。激しいいびき・無呼吸は、上気道の閉塞によって起こります。また、無呼吸のため、CO2が体内に蓄積し、呼吸性アシドーシスになります。無呼吸は酸素が不足し寝苦しくなるため、仰向けから解放されようと大きく寝返りをうち、頻回に目が覚めてしまうこともあります。無呼吸は、REM睡眠時だけではなくnon-REM睡眠時にも認められます。
日中の症状は、頭痛(起床時)や傾眠などがあります。夜間の頻回の覚醒によって熟睡感が得られず、日中に傾眠傾向となります。その結果、仕事能率低下につながったり、運転中の居眠りが原因で事故を起こしたりすることがありますので、早期に治療を行うことが重要です。起床時の頭痛は、高いCO2血症による血管拡張のために生じます。
分類
睡眠時無呼吸症候群は、閉塞性・中枢性・混合性の3型に分類されます。
「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)」は、上気道が閉塞していますので空気が通れず、呼吸が停止してしまいます。呼吸中枢は正常ですので、換気運動はあります。原因は、肥満が主ですが、他にもPickwick症候群や形態学的異常(アデノイド・扁桃肥大など)です。
「中枢性睡眠時無呼吸症候群」は、呼吸中枢に異常がありますので、換気運動がありません。そのため、呼吸の停止してしまいます。原因は、脳障害(脳血管障害・脳腫瘍)や心障害(心不全・A-Vブロック)・原発性肺胞低換気症候群などです。
睡眠時無呼吸症候群の大半は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)が占めますが、閉塞性と中枢性の混合である、「混合性睡眠時無呼吸症候群」も存在します。混合性睡眠時無呼吸症候群は、睡眠のはじめに中枢性の波形がみられ、途中から閉塞性に移行する特徴があります。
命に関わることもある二次的な合併症
無呼吸に伴う低酸素血症、頻回の覚醒により、不整脈や高血圧症・虚血性心疾患・脳血管障害・心不全などのような合併症を生じることがありますので、注意が必要です。特に、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と高血圧の発症は関係性が高いことが判明しています。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の場合、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)や脳血管障害(脳卒中など)を発症する確率が、正常に比べ約3~4倍も高くなると言われています。これらを予防するためにも、早期からの治療が重要となります。
交通事故の発生率が高い
睡眠時無呼吸症候群による日中居眠りなどによって交通事故が多発しています。閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の場合、正常に比べ約3~4倍も高くなると言われており、中等度以上の方は約7倍以上であるという研究データもあります。こうした観点からも早期治療が重要になります。
いびき・無呼吸のメカニズム
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)では、下記のような機序でいびきや無呼吸が出現します。症状が軽度のいびきのみであれば、健康に対する危険性は少ないです。
起きている時には口がしっかりと閉じられ、空気の通り道となる気道が確保されていますが、睡眠によって筋肉が弛緩し、口が開いて舌根および軟口蓋の後端が沈下します。立位時に比べて気道は狭くなりますが、空気の通り道は保たれています。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)では、肥満(気道周囲の脂肪の沈着)やアデノイドなどによって気道が狭くなっています。このため、舌根および軟口蓋の沈下によってさらに気道が狭くなると、空気が気道を振動させ、音が出るようになります。狭くなった気道を空気が無理に出入りすることで大きな音としていびきが生じているのです。
舌根・軟口蓋の後端が上気道を完全に閉塞してしまうと、気流が停止し、無呼吸となります。窒息と同じ状態になりますが、努力呼吸は持続します。
いびき・無呼吸の原因:肥満・ストレス・鼻炎
のどの筋力の緩み・低下:加齢・アルコール摂取・肥満
いびきの原因は、のどの筋肉の緩み・低下と言えます。そのため、加齢が一番の原因ですが、ストレートネックと言われる姿勢不良やアルコールの摂取などでも筋肉の緩み・低下につながりますので、いびきを引き起こす原因になります。
気道の確保不良(肥満・アデノイド)・アゴの骨格・遺伝・扁桃が大きい
上気道が閉塞していますので空気が通れず、いびきや呼吸停止につながりますので、気道を狭くしてしまうのど周辺の肥満(気道周囲の脂肪の沈着)やアデノイドが原因となります。
また、アゴが小さい人や扁桃が大きい人なども気道を狭くしてしまう原因になります。アゴが小さい人は、骨格が細く下アゴが上アゴよりも奥に引っ込んでいるのが特徴です。柔らかい物を食べ、咀嚼回数が減っている現代人に多く見られるタイプです。骨格は遺伝しますので、親がいびきをかく人はいびきをかきやすいアゴの可能性が高くなると言われています。
口呼吸
日常から口呼吸で口が開いたままですと、のどやアゴの筋力低下につながるだけではなく、舌が垂れ下がりやすく、気道を狭くしてしまう原因になります。そのため、痩せ型や鼻炎がある人で鼻呼吸ができない人は、いびきや無呼吸の原因になります。
対策と治療:筋トレ・抱き枕・マウスピース・CPAP・手術
肥満解消
まずは肥満の解消が重要です。肥満は、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回り、過剰分が体脂肪として蓄積されることが原因として引き起こされます。そのため、肥満症の主な治療法は、「食事療法」・「運動療法」・「行動療法」の3つが大切になります。減量のため食事だけを制限してしまうと、重要な筋までもが減少してしまい、基礎代謝の低下などにもつながってしまいますので、食事療法と運動療法の併用が重要です。
抱き枕・横向き寝
対処法としておすすめなのが、抱き枕や横向き寝です。仰向けは気道が狭くなりやすいため、無呼吸に陥りやすい姿勢です。無呼吸は酸素が不足し寝苦しくなるため、仰向けから解放されようと大きく寝返りをうち、目が覚めてしまうこともあります。横を向いて眠ると気道が広がっていびきや無呼吸が減る可能性がありますので、抱き枕をしっかり抱いて眠ったり、脚にクッションを挟んで寝たりする事で横向き寝をしやすくなります。
枕・マットレスの見直し
気道を狭くしないためには、枕の高さも重要です。まずは、首の付け根の飛び出している部分(第七頚椎)に、床に対して垂直に手を当て、手と首の間の一番深い隙間を測りましょう。それが枕の理想の高さです。枕が低い場合には、フェイスタオルを2つ折りにしたものを枕の下に敷きましょう。寝返りしにくい時は、4つ折りにして枕の下の両端に敷きましょう。
また、マットレスにもあまりこだわっていないという方も多いようですが、自分の体型とマットレスが合っていないと、背中の痛みや違和感・腰の重さや痛み・不眠・疲れがとれないなど、様々な不調の原因にもなります。身体とマットレスに隙間がある場合は、バスタオルなどで間を埋めましょう。
舌と口(アゴ)のトレーニング
加齢などによる、舌や口(アゴ)の筋力低下の予防・改善のためにトレーニングを行いましょう。
舌のトレーニングは、舌先と舌の根元をまっすぐ強く押し出すようにしましょう。上や下にいかないようにまっすぐ押し出し、舌の根元に負荷がかかっていることを意識しましょう。また、上唇・左唇・右唇を触れたり、上唇・下唇を舐めるように1周ぐるっとさせましょう。
口(アゴ)のトレーニングは、大きな口を開けて発声したり、「い」と「う」の形に口を動かしたりすることで、唇周りや口周りの筋肉を同時に鍛えることができます。それぞれ1日20回×2~3セット行ってみましょう。
マウスピースの作成
舌が垂れ下がらないよう下アゴを前に突き出すマウスピースがあります。種類はさまざまあり、市販で購入できるものから、自分の歯型に合ったマウスピースまで幅広く購入する事ができます。
経鼻的持続気道陽圧法(nasal CPAP)
「経鼻的持続気道陽圧法(nasal CPAP)」が最も有効かつ安全であるとされている方法です。nasal CPAPは、持続的な陽圧負荷をかけることによって、気道の閉塞を防ぐ方法です。空気が軌道を押し上げますので、呼吸が停止しなくなることで熟睡感を自覚し、日中の傾眠も改善させる効果があります。
治療法としては、鼻から強制的に空気を送って気道を確保するCPAP
手術:口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)
口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)は、口蓋扁桃摘出術を行い、その後口蓋垂・軟口蓋・口蓋弓などを切除・縫合することにより咽頭腔を広くする手術法です。
まとめ
睡眠中に無呼吸になると脳や身体は休まりません。重症化すると眠りを妨げるだけでなく、動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞を招きますので、これらを予防するためにも、早期からの治療を行いましょう。
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