今年の夏も例年通りの猛暑です。熱中症で搬送される人は年々増加しており、約4割が家の中で発症、65歳以上に限るとその数は6割近くになります。夏の疲労が積み重なる8月はもちろん、残暑の9月も注意が必要です。
そこで今回は、熱中症の原因や対策をご紹介します!
熱中症とは?熱中症の危険度と対処法
熱中症とは?
- 体温を平熱に保つために汗をかき、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)の減少や血液の流れが滞るなどして、体温が上昇して重要な臓器が高温にさらされたりすることにより発症する障害の総称です
- 高温環境下に長期間いた時、あるいはいた後の体調不良はすべて熱中症の可能性があります
- 死に至る可能性のある病態です
- 予防法を知って、それを実践することで、完全に防ぐことができます
- 応急処置を知っていれば、重症化を回避し後遺症を軽減できます
人は、環境によって体温が変動するカエルや魚などの変温動物とは違い、37℃前後の狭い範囲に身体の温度を調節している恒温動物です。私たちの身体は、運動や身体の営みによって常に熱が産生されますので、暑熱環境下でも、異常な体温上昇を抑えるための効率的な体温調節機構も備わっています。
暑い時には、自律神経を介して末梢血管が拡張します。そのため、皮膚に多くの血液が分布し、外気への放熱により体温低下を図ることができます。
また、汗をたくさんかくことで、「汗の蒸発」に伴って熱が奪われる(気化熱)ことから体温の低下に役立ちます。汗は、身体にある水分を原料にして皮膚の表面に分泌されます。このメカニズムも自律神経の働きによります。
このように私たちの体内で本来必要な重要臓器への血流が皮膚表面へ移動し、また大量に汗をかくことで身体から水分や塩分(ナトリウムなど)が失われるなどの脱水状態に対して、身体が適切に対処できなければ、筋肉のこむら返りや失神(いわゆる脳貧血:脳への血流が一時的に滞る現象)を起こします。そして、熱の産生と熱の放散とのバランスが崩れてしまえば、体温が急激に上昇します。このような状態が熱中症です。
熱中症は、死に至る恐れのある病態ですが、適切な予防法を知っていれば防ぐことができます。また、適切な応急処置により重症化を回避し、後遺症を軽減することもできます。
熱中症の4割は室内で起こる?
熱中症患者の4割は、室内で発症しています。一番多いのが、リビング。2位は寝室、3位はトイレです。夜になると外気温は下がりますが、室内は日中受けた熱がこもって暑いままです。その状態で眠ると熱中症になる危険があります。
リビング
高齢になると暑さを感じにくくなりますが、体は熱気にさらされています。また、高齢になると汗の量が減り、身体を冷やす機能が衰えるため熱中症になりやすいと言えます。リビングには温湿度計を置き、温度28度・湿度70%を超えたら迷わずエアコンをつけましょう。
キッチン内での調理
ガスコンロに点火してから時間がかかるものや、水蒸気が大量に出て湿度が上がる調理(パスタをゆでるなど)は、特に熱中症の危険度が上がります。キッチンでの調理には十分注意しましょう。
寝室
夜間、睡眠中にも高い割合で熱中症が起こります。原因の一つは天井にあります。特に断熱材が使われていない家の2階で、屋根直下の部屋などは、屋根が太陽の熱を吸収し、最上階の天井が温められ、夜になっても放熱し続けるため室温を上昇させてしまいます。日中に日差しが強かった日は、エアコンを賢く使いましょう。夜間は温度を高めに設定し、風を直接体に当てないようにして、朝までつけっぱなしで寝るのが一番おすすめです。
熱中症を引き起こす3つの要因・原因
要因・原因①:環境
- 気温が高い
- 湿度が高い
- 風が弱い
- 日差しが強い
- 閉め切った屋内
- エアコンの無い部屋
- 急に暑くなった日
- 熱波の襲来
要因・原因②:身体
- 高齢者や乳幼児・肥満の方
- 糖尿病や精神疾患などの持病
- 低栄養状態
- 下痢やインフルエンザなどによる脱水状態
- 二日酔いや寝不足などの体調不良
要因・原因③:行動
- 激しい筋肉運動や慣れない運動
- 長時間の屋外作業
- 水分補給できない状況
熱中症の症状(発熱・頭痛・吐き気・足がつる)と重症度(Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度)
熱中症は、「暑熱障害による症状の総称」として用いています。軽い症状から命にかかわる重症なものまで、段階的にいくつかの症状がみられます(上記の表参照)。
「軽症」である熱失神は立ちあがったときなどにクラッとする「立ちくらみ」、同様に軽症に分類される熱けいれんは、全身けいれんではなく、「筋肉のこむら返り」です。こむら返りは脱水症状のサインです。大量の汗をかいて体内の水分と塩分が不足すると、足や腕・腹などの筋肉に痛みを伴うけいれんが起こることがあります。どちらも意識は清明です。他にも、呼吸や脈が速くなる、唇のしびれなどが表れることがあります。
「中等症」に分類される熱疲労では、全身の倦怠感や脱力・頭痛・吐き気・嘔吐・下痢等がみられます。頭痛や寒気は風邪の症状ですが、暑い環境に長くいたときは、熱中症の可能性があります。
「最重症」は熱射病と呼ばれ、40度以上の高熱・意識障害・けいれん・異常行動などを起こす状態のことを言います。脳内の温度が上昇することで中枢神経に異常が起こり、身体のさまざまな臓器に障害が出て、命を落とすこともある危険な状態です。高体温に加え意識障害と発汗停止が主な症状です。けいれん・肝障害や腎障害も合併し、最悪の場合には早期に死亡する場合もあります。
重症度を判定するときに重要な点は、意識がしっかりしているかどうかです。少しでも意識がおかしい場合には、Ⅱ度以上と判断し病院への搬送が必要です。「意識がない」場合は、全てⅢ度(重症)に分類し、絶対に見逃さないことが重要です。また、必ず誰かが付き添って、状態を見守ってください。
どういう時に熱中症を疑う?
熱中症の危険信号として、上記のような症状が生じている場合には積極的に重症の熱中症を疑いましょう。
熱中症を疑ったときの応急処置
熱中症を疑った時には、放置すれば死に直結する緊急事態であることをまず認識しなければなりません。重症の場合は救急車を呼ぶことはもちろん、現場ですぐに身体を冷やすことが必要です。
対処①:涼しい環境への避難
- 風通しのよい日陰や、できればクーラーが効いている室内等に避難させましょう。
対処②:脱衣と冷却
- 衣服を脱がせて、身体から熱の放散を助けます。きついベルトやネクタイ、下着は緩めて風通しを良くします。
- 露出させた皮膚に濡らしたタオルやハンカチを当て、うちわや扇風機等で扇ぐことにより身体を冷やします。服や下着の上から少しずつ冷やした水をかける方法もあります。
- 自動販売機やコンビニで、冷やした水のペットボトル、ビニール袋入りのかち割り氷、氷のう等を手に入れ、それを前頸部(首の付け根)の両脇、腋窩部(脇の下)、鼠径部(大腿の付け根の前面、股関節部)に当てて、皮膚直下を流れている血液を冷やすことも有効です。
- 体温の冷却はできるだけ早く行う必要があります。重症者を救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げることができるかにかかっています。
- 救急車を要請する場合も、その到着前から冷却を開始することが必要です。
対処③:水分・塩分の補給
- 意識がある場合は、冷たい水を持たせて、自分で飲んでもらいます。冷たい飲み物は胃の表面から身体の熱を奪います。同時に水分補給も可能です。大量の発汗があった場合には、汗で失われた塩分も適切に補える経口補水液やスポーツドリンク等が最適です。食塩水(水1リットルに1~2gの食塩)も有効です。
- 応答が明瞭で、意識がはっきりしている場合は、冷やした水分を口からどんどん与えてください。
- 「呼びかけや刺激に対する反応がおかしい」、「答えがない(意識障害がある)」時には誤って水分が気道に流れ込む可能性があります。また「吐き気を訴える」ないし「吐く」という症状は、すでに胃腸の働きが鈍っている証拠です。これらの場合には、口から水分を飲んでもらうのは禁物です。すぐに、病院での点滴が必要です。
対処④:医療機関へ運ぶ
- 自力で水分の節酒ができない場合は、塩分を含め点滴で補う必要がありますので、緊急で医療機関に搬送することが最優先の対処法です。
- 実際に、医療機関を受診する熱中症の10%弱がⅢ度ないしⅡ度で、医療機関での輸液(静脈注射による水分の投与)や厳重な管理(血圧や尿量のモニタリング等)、肝障害や腎障害の検索が必要となってきます。
熱中症予防!環境省・気象庁が発表!熱中症警戒アラート
令和3年4月から、熱中症予防に関する情報「熱中症警戒アラート」を新たに全国で開始しています。 熱中症警戒アラートは、熱中症の危険性が極めて高い暑熱環境になると予想される日の前日夕方または当日早朝に都道府県ごと(※北海道、鹿児島、沖縄は府県予報区単位)に発表されています。
発表されている日には、外出を控える、エアコンを使用する等の、熱中症の予防行動を積極的にとりましょう。
エアコンを適切に使用しましょう
- 昼夜問わず、エアコン等を使用して部屋の温度を調整しましょう
熱中症のリスクが高い方に声かけをしましょう
- 高齢者、子ども、持病のある方、肥満の方、障害者等は熱中症にかかりやすい方々です。これらの熱中症のリスクが高い方には、身近な方から、夜間を含むエアコンの使用やこまめな水分補給等を行うよう、声をかけましょう。
普段以上に「熱中症予防行動」を実践しましょう
- のどが渇く前にこまめに水分補給しましょう(1日あたり1.2Lが目安)
- 屋外で人と十分な距離(2メートル以上)を確保できる場合は適宜マスクを外しましょう
- 涼しい服装にしましょう
外出はできるだけ控え、暑さを避けましょう
- 熱中症を予防するためには暑さを避けることが最も重要です
- 不要不急の外出はできるだけ避けましょう
外での運動は、原則、中止/延期をしましょう
- 身の回りの暑さ指数(WBGT)に応じて屋外やエアコン等が設置されていない屋内での運動は、原則、中止や延期をしましょう
暑さ指数(WBGT)を確認しましょう
- 熱中症を予防するためには暑さを避けることが最も重要です
- 不要不急の外出はできるだけ避けましょう
暑さ指数(WBGT):熱中症予防のための指標とは?
「暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)」とは、気温、湿度、輻射熱(日差し等)からなる熱中症の危険性を示す指標で、「危険」「厳重」「警戒」「注意」「ほぼ安全」の5段階があります。段階ごとに熱中症を予防するための生活や運動の目安が示されていますので、日常生活の参考にしましょう。
熱中症を防ぐための日常生活での対策・注意事項
熱中症は生命にかかわる病気ですが、予防法を知っていれば防ぐことができます。日常生活における予防は、脱水と体温の上昇を抑えることが基本です。体温の上昇を抑えるには、薄着になる・日陰に移動する・水浴びをする・冷房を使う等、暑さから逃れる行動性の体温調節と、皮膚血管拡張と発汗により熱を身体の外に逃がす、自律性の体温調節があります。しかし、皮膚表面温の上昇には限り(35℃程度まで)がありますので、高温環境では汗による体温調節に対する依存率が高くなり、汗のもととなる身体の水分量を維持することが重要になります(周囲の温度が35℃以上になると、逆に熱が身体に入ってきます)。
日常生活では、からだ(体調・暑さへの慣れ等)への配慮と行動の工夫(暑さを避ける・活動の強さ・活動の時期と持続時間)、および住まいと衣服の工夫が必要です。
(1)暑さを避けましょう
< 行動の工夫のポイント >
- 暑い日は無理して行動しない
- 直射日光を避けるため、日陰を選んで歩く(日傘を活用する)
- 涼しい場所に避難する
- 適宜休憩する・頑張らない・無理をしない
- 天気予報を参考にし、暑い日や時間を避けて外出や行事の日時を検討する
<住まいの工夫(室内で涼しく過ごす工夫)のポイント >
- 玄関に網戸、向き合う窓を開けるなど、風通しを利用する
- ブラインドやすだれを垂らす・緑のカーテン・日射遮断フィルムなど、窓から射し込む日光を遮る
- 冷房を入れる・扇風機を利用するなど、空調設備を利用する
- 夕方に打ち水をするなど、気化熱を利用する
- 反射率の高い素材を使った屋根・屋根裏の換気口など、外部の熱を断熱する
<衣服の工夫のポイント >
衣服で日射の侵入を防ぎ、ゆったりした服装で、衣服の中や身体の表面に風を通し、身体から出る熱と汗をできるだけ早く逃がしましょう。室内で快適に過ごせる軽装への取り組み「クールビズ」を実践しましょう。
- ゆったりした衣服にする
- 襟元を緩めて通気する
- 吸汗・速乾素材や軽・涼スーツ等を活用する
- 炎天下では、輻射熱を吸収する黒色系の素材を避ける
- 日傘や帽子を使う(帽子は時折外して、汗の蒸発を促しましょう)
汗で濡れたら服を着替える
汗は、乾くときに身体から熱を奪って身体を冷やしてくれます。服が濡れたままの状態でいると熱が逃げずにこもってしまうため、着替えを常備しましょう。Tシャツの場合は、速乾性で通気性の高い素材がオススメです。
タオルで巻いた保冷剤などで首の血管を冷やす
皮膚の表面近くに太い血管が通っているので、保冷剤などを当てると全身に回る血液を素早く冷やす事ができます。
首の前側の脇には、表面近くを太い静脈が通っています。ここを冷やすと血液が冷え、冷えた血液が体の中に戻っていって体全体を冷やしてくれます。
すだれやよしずを外にかける
すだれを外へかけ、直射日光を部屋に入れないようにしましょう。また、ベランダがある場合は、よしずを使うのもおすすめです。よしずを使う際は、窓から離して日陰を多く作るのがポイントです。窓付近の床に熱が溜まるのを防ぎ、室内の温度上昇を和らげる事ができます。
扇風機を有効活用
扇風機は、首を上向きにして部屋全体に風を送るようにしましょう。下にたまったエアコンの冷気を循環させる事ができます。冷えすぎや乾燥を招くので、風を直接身体に当てるのは避けましょう。
電気製品とベッドを離す
熱を持つ電気製品とベッドは近づけないようにしましょう。
寝る前に部屋を冷やす
寝室は熱がこもっていますので、寝る前から室内を冷やしておきましょう。エアコンをつけると身体がダルくなるという方は、下半身が冷えないような服装や、風を直接受けないよう工夫をしてみましょう。
(2)こまめに水分を補給しましょう
体温を下げるためには、汗が皮膚表面で蒸発して身体から気化熱を奪うことができるように、しっかりと汗をかくことがとても重要です。汗の原料は、血液中の水分や塩分ですので、体温調節のためには、汗で失った水分や塩分を適切に補給する必要があります。
また、私たちの身体は、「不感蒸泄」と言って、1日に皮膚から600cc、呼気から300ccの水分を失っています。空気が乾燥しているとより多くの水分が失われてしまいますが、エアコンは、室温だけでなく湿度も下がりますので、空気が乾燥しやすくなります。
更に、人間は、軽い脱水状態のときにはのどの渇きを感じません。そのため、汗をかいていなくても水分補給を忘れずに行いましょう。
熱中症対策におすすめな飲み物は下記のとおりです。
おすすめな飲み物①:麦茶
熱中症対策におすすめなのが、麦茶です。利尿作用のあるカフェインが含まれていませんので、身体の水分を保持する能力が高く、水分だけでなく汗で失ったミネラルも補給できます。また、香り成分ピラジンには、水分を失って流れにくくなった血液をサラサラにしてくれる働きもあります。麦茶は熱中症予防には最適な飲み物と言えます。
おすすめな飲み物②:牛乳
熱中症予防の条件の1つは、たくさんの汗をかき体温調節することですが、そのカギとなるのが血中の水分量です。実は身体を動かした後に牛乳を飲むと、その量が7.6%も増えるという結果があります。これは、水分を引き寄せるアルブミンが増えるためであり、結果体温調節機能が向上します。運動後30分以内に飲む事で、熱中症になりにくくなります。
おすすめな飲み物③: 炭酸水
炭酸水は、血行を良くし胃の働きを活発にする働きがあり、水の吸収率がアップします。
おすすめな飲み物④: レモン水
レモン水には、疲労回復の効果が期待できるビタミンCが含まれています。
おすすめな飲み物⑤:甘酒
甘酒は、ビタミンB群・アミノ酸・ブドウ糖・オリゴ糖などの栄養が豊富に含まれており、吸収が早く「飲む点滴」と言われています。さらに、塩分も含んでいるので熱中症対策にピッタリです。
おすすめな飲み物⑥:冷や汁
冷や汁は、塩分補給のできる味噌、ミネラルが豊富なキュウリ、ビタミンB1を含む青ジソやビタミンEを含むゴマ、さらにナスには胃液の分泌を促し食欲増進が期待できるコリンが含まれており、熱中症対策にピッタリの料理です。
(3)急に暑くなる日に注意しましょう
熱中症は、例年、梅雨入り前の5月頃から発生し、梅雨明けの7月下旬から8月上旬に多発する傾向があります。人間が上手に発汗できるようになるには、暑さへの慣れが必要です。
暑い環境での運動や作業を始めてから3~4日経つと、汗に無駄な塩分をださないようになり、熱けいれんや塩分欠乏によるその他の症状が生じるのを防ぎます。このようなことから、急に暑くなった日に屋外で過ごした人や、久しぶりに暑い環境で活動した人、涼しい地域から暑い地域へ旅行した人は、暑さに慣れていないため、熱中症になりやすくなります。暑い時には無理をせず、徐々に暑さに慣れるように工夫しましょう。
(4)暑さに備えた身体づくりをしましょう
熱中症は、梅雨の合間に突然気温が上がった日や、梅雨明け後に急に蒸し暑くなった日にもよく起こります。このようなとき、身体はまだ暑さに慣れていませんので、熱中症が起こりやすくなります。暑い日が続くと、身体がしだいに暑さになれて(暑熱順化)、暑さに強くなります。この慣れは、発汗量や皮膚血流量の増加、汗に含まれる塩分濃度の低下、血液量の増加、心拍数の減少等として現れますが、こうした暑さに対する身体の適応は気候の変化より遅れて起こります。
暑熱順化は「やや暑い環境」において、「ややきつい」と感じる強度で、毎日30分程度の運動(ウォーキング等)を継続することで獲得できます。実験的には暑熱順化は運動開始日後から起こり、2週間程度で完成すると言われています。そのため、日頃からウォーキング等で汗をかく習慣を身につけて暑熱順化していれば、夏の暑さにも対抗しやすくなり、熱中症にもかかりにくくなります。じっとしていれば、汗をかかないような季節からでも、少し早足でウォーキングし、汗をかく機会を増やしていれば、夏の暑さに負けない身体をより早く準備できることになります。また、生活習慣病の予防効果も期待できます。
(5)体力や体調を考慮しましょう
熱中症の発生には、その日の体調が影響します。
暑さに対しても最も重要な働きをする汗は、血液中の水分と塩分から作られます。脱水状態や食事抜きといった万全ではない体調のまま暑い環境に行くことは、絶対に避けなければなりません。風邪等で発熱したり、下痢になったりしている場合は脱水状態と言えます。
また、深酒をして二日酔いの人も脱水状態であり、非常に危険です。体調が回復して、食事や水分摂取が十分にできるまでは、暑いところでの活動は控えるようにしましょう。
また、活動の後には体温を効率的に下げるように工夫します。そのためには、十分な水分補給(大量に汗をかいた場合は塩分も補給)と良い睡眠を取り、涼しい環境でなるべく安静に過ごすことが大切です。
肥満の方・小児や高齢の方・心配機能や腎機能が低下している方・自律神経や循環機能に影響を与える薬物を飲んでいる方も熱中症に陥りやすくなりますので、活動強度に注意しましょう。
(6)集団活動の場ではお互いに配慮しましょう
熱中症の予防には、個人ごとの努力と共に集団生活におけるお互いの配慮や注意も必要です。
まず、暑さが避けられない場所での運動や作業は、なるべく短時間で済ませるようにしましょう。責任者は、集団生活のスケジュールを工夫したり、暑さや身体活動強度に合わせてこまめに休憩を入れたり、選手や作業者を交代させて一人あたりの活動時間を短くしたりします。
暑い場所での集団活動で忘れてはならないものは、個人の体力や体調に合わせたペースを守らせ、無理をさせないことです。
そして、水分と塩分(ナトリウム等)をいつでも補給できるように飲料を準備します。のどの渇きの感覚に頼っているといずれも不足してしまいますので、活動を始める前から補給するように指導するのがポイントです。また、水分のみを補給していると血液中の塩分濃度が低下して、塩分欠乏によって筋けいれんなどの症状が生じることがあります。特に、たくさん汗をかくような状況では塩分も補給するように注意しましょう。活動のスケジュールには、水分補給のための休憩を計画しましょう。
毎年、集団活動で管理が要求される分野では、熱中症が多く発生し始める6月よりも前に、熱中症についての予防や対策について責任者を対象に周知することが大切です。
さらに、いざというときに救急搬送できる医療機関を調べておきましょう。実際に、患者さんを医療機関で受診させる際は、運動や仕事の様子を説明できる人が同行するようにしましょう。
まとめ
熱中症で搬送される人は年々増加しており、最悪の場合は死に至る恐れのある病態ですが、適切な予防法を知っていれば防ぐことができます。また、適切な応急処置により重症化を回避し、後遺症を軽減することもできますので、しっかり予防・対策を図りましょう。
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