「生理痛がひどくて、夜もなかなか寝られない」「生理痛がひどく、毎月の生理が憂うつ」など、生理痛を経験したことがある女性は全体の約8割に及ぶとされており、生理痛はほとんどの女性の悩みのひとつだと思います。
そのため、生理=生理痛と痛くて当たり前と思っている方もいるかもしれませんが、生理痛にも痛みのメカニズムがあり、原因が異なります。また、学校や会社に行けないなど日常生活に支障をきたすほど痛みが強く、全身症状を伴うほどの生理痛は「月経困難症」の疑いがあります。
そこで今回は、生理痛の症状と原因についてご紹介します!
なぜ生理(月経)は起こる?生理のメカニズムとは?
生理(月経)とは、卵胞ホルモン(エストロゲン)や黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きによって、子宮内膜が出血を伴って体外へ排出されることで、周期は人によって少しずつ異なりますが、概ね25~38日前後です。
生理のメカニズムは以下の通りです。
周期①:月経期/生理中(1-5日)
月経期では、妊娠しなかった場合に不要になった粘膜(子宮内膜)は役目を終えて出血を伴って剥がれ落ちます。
この時、プロスタグランジンというホルモンが分泌され、子宮の収縮を促し、 不要になった粘膜(子宮内膜) を血液とともに子宮口から体外に排出します。これが生理です。
周期②:卵胞期(6-12日)
卵胞期では、卵巣内で卵胞(卵子を包む袋)を育てる卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌量がアップし、卵胞が成熟を始めることで、排卵の準備を整えます。
周期③:排卵期(13-15日)
排卵期では、が卵巣を刺激して、十分に成長した卵子が卵巣の外に飛び出します。これが排卵です。
周期④:黄体期(16-28日)
黄体期では、排卵して卵巣から排出された卵子が、卵管を通り子宮へ運ばれます。すると、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌量がアップし、子宮内膜を厚くして排卵から10~14日かけて妊娠のための準備をします。
生理時に起こるつらい症状
生理は、さまざまな女性ホルモンが分泌することで、さまざまなつらい症状が生じます。代表的な症状は下記の通りです。
症状①:腹痛
不要になった粘膜を排出する時に子宮内膜からプロスタグランジンというホルモンが分泌されます。このホルモンは子宮を収縮させ、不要になった粘膜を血液とともに体外に押し出すために欠かせない物質です。しかし、このプロスタグランジンは、同時に「痛み・熱・腫れ」を引き起こす成分であると共に、過剰に分泌すると必要以上に子宮が収縮し、腹痛となって症状に現れます。
症状②:腰痛
生理痛の一つである腰痛も腹痛と同様に、プロスタグランジンの過剰分泌が原因で起こります。プロスタグランジンの働きによって子宮や子宮周囲の血流が悪くなってしまい、骨盤の周りを中心にだるさや痛みが起こり、腰痛の原因になります。
症状③:頭痛
生理中の頭痛は、女性ホルモンの一つである卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌量が関与しています。卵胞ホルモン(エストロゲン)は生理前にその分泌量が減少し、それに伴い血管の収縮を促す作用がある脳内物質のセロトニンも減少してしまいます。
セロトニンの減少によって、脳内の血管が拡張してしまい頭痛が起こる原因になります。この頭痛の特徴は、通常見られる偏頭痛よりも症状が長時間に及び、痛みもより強くなる傾向にあります。
症状④:吐き気や嘔吐
吐き気や嘔吐も、プロスタグランジンの過剰分泌が原因で起こります。
プロスタグランジンは子宮だけではなく胃や腸も収縮させてしまう働きがありますので、プロスタグランジンが過剰に分泌することで、胃や腸も過剰に収縮してしまいます。それによって胃に不快感が起こり、吐き気や嘔吐となって感じられます。
症状⑤:貧血
生理中に起こる貧血は、経血量が多すぎる鉄欠乏性貧血と自律神経失調症による脳貧血の2つがあります。
経血量が多すぎると血液中のヘモグロビンが低下し、貧血の原因になり、めまいや立ちくらみがするなどの症状を感じることがあります。
また、脳貧血は起立性障害・自律神経失調症の1つと考えられており、生理中の貧血のほとんどが脳貧血の症状とされています。生理中はホルモンバランスが乱れがちになり、それに伴い自律神経が乱れることで脳貧血が起こる原因になります。
症状⑥:イライラや不安感
生理前や生理中に起こるイライラや不安感などの精神系症状は、女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)の減少が原因になります。
卵胞ホルモン(エストロゲン)には、心も身体もリラックスさせる働きがありますが、生理中はこの卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減少してしまいますので、その結果、些細なことでイライラしたり、心の安定性にかける症状が現れたりします。
生理痛の原因
生理痛が起こる主な原因は、プロスタグランジンというホルモンの過剰分泌や子宮の未発達、精神的なもの、生理以外の病気など、いくつかの原因が考えられます。
①プロスタグランジンの過剰分泌
生理中は、不要になった粘膜を排出する時に子宮内膜からプロスタグランジンというホルモンが分泌されます。このホルモンは子宮を収縮させ、不要になった粘膜を血液とともに体外に押し出す働きをします。しかし、このプロスタグランジンが過剰に分泌すると、必要以上に子宮が収縮し、下腹部や腰の痛みを起こし生理痛の要因になります。
②子宮の発達が未熟で狭い
若い女性や出産の経験がない女性に多い原因の一つで、子宮の発達が影響します。
初潮を迎えてから最初の数年は、子宮が十分に成熟していないため、子宮口が狭く硬い状態になっています。そのため、子宮外にスムーズに血液を押し出すことができず、身体がより強く子宮を収縮させて血液を押し出そうとしますので、痛みが起こります。
出産後は子宮の出口が広がりますので、生理痛が軽くなる場合もありますが、年齢とともに子宮が成熟すると自然と治まります。
③肉体的・精神的なストレス
冷房などで身体が冷えたり、仕事などで長時間立ちっぱなしなど、血行が悪くなったり身体に負担がかかったりすると、より強い痛みを感じることがあります。
また、ストレスは自律神経やホルモンバランスを崩しやすくします。そのため、生活環境の変化など、精神的なストレスが生理と重なると、それが原因となって痛みを強く感じることもあります。
④病気による痛み
激しい生理痛には、他の病気が隠されている可能性があります。
生理痛を引き起こす代表的な病気としては、「子宮内膜症」や「子宮筋腫」が挙げられます。この病気は、生理痛の痛み以外にあまり自覚症状がないのが特徴ですので、生理痛だと思って見過ごしてしまう可能性があります。そのため、気付かないうちに発症、徐々に進行してしまい、発見された時には重症化している場合も少なくありません。
早期発見が重要ですので、いつもより痛みがひどい、経血の量がいつもより多いなどは要注意です。また、生理のたびに寝込んでしまう、毎月ひどい痛みを伴うなど、いつもと違うと感じたら婦人科を受診しましょう。
日常生活がつらいほどの生理痛は月経困難症の疑い?
多くの女性を苦しめる生理痛ですが、学校や会社に行けないなど日常生活に支障をきたすほど痛みが強く、下腹部痛のほかに腰痛や頭痛・吐き気・下痢やめまいなどの全身症状を伴うほどの生理痛は「月経困難症」の疑いがあります。
その月経困難症には、タイプによって大きく「機能性月経困難症」と「器質性月経困難症」の2つに分類されます。
機能性月経困難症とは?
機能性月経困難症は、身体に問題となるような原因疾患(病気)がなくて症状が現れる場合のことです。
出産前で子宮頸管が非常に細く狭かったり、体質的に生理時の出血(経血)を子宮外に排出するために必要なプロスタグランジンの分泌が多く、子宮の収縮が強く起こることが原因で痛みを感じやすくなります。
初潮(初経)を迎えた2~3年後から起こることも特徴であり、若い人の強い月経痛はほとんどこれにあてはまります。発症は思春期を迎えた十代の女性に多く、年齢を重ねるごとに痛みも弱くなり、一般的に出産すると月経痛は軽くなります。
器質性月経困難症とは?
器質性月経困難症は、身体に問題となるような何かしらの原因疾患(病気)がなり症状が現れる場合のことです。
器質性月経困難症を引き起こす三大疾患は、子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症などの病気が挙げられ、生理中以外にも症状が起こる場合があります。
出産後の女性で、以前より月経痛や血量が増したり、塊が出たり、月経前から痛みがある場合などは、子宮筋腫や子宮内膜症などが原因と考えられますが、原因疾患を治療すると症状は改善していくことも特徴です。
原因①:子宮内膜症
子宮内膜症とは、子宮の内側以外の場所に子宮内膜と同じような組織が作られる病気です。
この組織は生理のたびに剥がれて出血しますが、これが何度も繰り返されると、まわりの組織とくっついて剥がれにくくなり、強い痛みを感じるようになります。また、子宮内膜症は生理のたびに進行し、腰痛や性交痛・排便痛を伴なうケースも多くあります。
生理がある女性の10人に1人が発症すると言われています。低用量ピルなどのホルモン製剤を用いることで痛みを緩和できる場合がありますが、生理痛が毎回ひどくなっている場合などは、早目に婦人科を受診しましょう。
原因②:子宮筋腫
子宮筋腫とは、子宮にできる良性の腫瘍のことです。
エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンによって大きくなると言われており、できる場所や大きさ・数・成長スピードは人によって異なり、生理痛が強い・生理の量(経血量)が増えるといった症状のほか、不正出血・貧血・腰痛・頻尿などの症状もさまざまです。
30歳以上の女性の20~30%にみられ、閉経して女性ホルモンが低下すると小さくなります。治療の必要性は、筋腫ができた場所や症状によって異なりますが、小さくて症状がない場合は、治療の必要はありません。
原因③:子宮腺筋症
子宮腺筋症とは、子宮内膜と同じような組織が子宮の筋肉内にできてしまう病気です。
子宮内膜症と似たような病気ですが、子宮内膜症の場合は内膜が子宮筋以外の場所にできるものを指します。子宮腺筋症は、強い生理痛がある・生理の量が増える・貧血・腰痛・月経期以外の腹痛・排便痛・性交痛などの症状があります。
子宮筋腫と同様に、女性ホルモンの影響で大きくなり、閉経後には小さくなります。子宮筋腫や子宮内膜症を合併している場合もあり、MRIを用いて診断され、症状が軽度の場合は治療の必要はありません。
まとめ
学校や会社に行けないなど日常生活に支障をきたすほど痛みが強く、下腹部痛のほかに腰痛や頭痛・吐き気・下痢やめまいなどの全身症状を伴うほどの生理痛は「月経困難症」の疑いがあります。市販の鎮痛剤などでコントロールできない時や生理痛が毎回ひどくなっている場合などは、早目に婦人科を受診しましょう。
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