「がん」は、2人に1人がかかる病気であり、今や国民病とされていますが、その中でも「胃がん」は年間5万人近くの命を奪い、男性の第2位に入るほど死亡数・罹患数の多い疾患です。
そんな胃がんの早期発見に大切なのが、健康診断や人間ドックです。しかし、胃の検査は「バリウム検査」と「胃内視鏡検査(胃カメラ)」があり、どっちが良いのか分からない事も多いと思います。
そこで今回は、バリウム検査と胃内視鏡検査(胃カメラ)の違いをご紹介します!
バリウム検査とは?
バリウム検査とは?
バリウム検査は、空腹状態でバリウム(胃部造影剤)と発泡剤を飲んで、上部消化管(食道から胃・十二指腸まで)内を流れるバリウムをX線で撮影し、胃の形状や胃の粘膜上に異常(ポリープや腫瘍が疑われる凹凸)がないかを確認する画像検査です。
胃バリウム検査は、胃がんの対策型検診として国が推奨している検査方法です。胃バリウムを用いたがん診断の精度は約70~80%といわれ、その検査感度の高さから胃がんによる死亡率を減少させるために有用な検査であるとされています。
バリウム検査は、さまざまな角度からの撮影が必要になりますので、先生の指示に従って、検査台の上で体の向きを上下左右に回転させる必要があります。胃の全体像を捉えやすい反面、初期の胃がんなど、小さな異変を見つけるのにはあまり向いていません。一方で、近年よく耳にする「スキルス性胃がん」の発見については、胃カメラ検査よりも有効な場合があります。
バリウム検査は確定診断ができる検査ではありませんので、異常が見つかった場合は、内視鏡(胃カメラ)で再検査をする必要があります。また、バリウムによる便秘のリスクがありますので、重度な便秘症や腸の疾患がある場合は検査ができません。さらに、放射線被ばくのリスクもありますので、妊娠中や妊娠している可能性がある場合は検査ができません。
検査終了後はコップ2杯程度の水を飲み、30分ほど時間を置いて下剤を飲みます。バリウムは必ず排出する必要があります。下剤の効果は通常、4~5時間で出ますが、夕方までに便が出ない場合は2回目の下剤を飲みます。完全にバリウムを出し切れるのは翌日です。便の色が白からいつもの茶色に変わればOKです。アルコールはバリウムを体内で固まりやすくしますので、排出されるまでは控えましょう。
バリウム検査ではどんな病気が分かる?
胃バリウム検査は、食道・胃・十二指腸の「がん」疾患や「ポリープ」のほか、胃酸が食道に逆流して起こる「逆流性食道炎」や、胃酸で自らの胃を溶かしてしまう「胃潰瘍」、「十二指腸潰瘍」、サバなどの魚介類に寄生する寄生虫「アニキサス」 、「ピロリ菌」などを早期発見することが可能です。
万が一がんや胃潰瘍ができている場合、その箇所の粘膜には凸凹ができるなどの変化が見受けられます。凹凸があるとバリウムが流れるとき粘膜へ付着するため、その部分のみX線で撮影されず、画像で異常を判別することができます。
バリウム検査の費用と検査時間は?
バリウム検査の費用は、一般的に5,000~7,000円程度です。
バリウム検査は、発泡剤とバリウムを飲んだ後すぐに行いますので、撮影にかかる時間は10分程度と短めです。
バリウム検査のメリット
- 痛い・苦しいなどの苦痛が少ない
- 胃の全体像を捉えやすい
- 受診費用が胃内視鏡検査(胃カメラ)よりも安価
バリウム検査のデメリット
- 初期の胃がんなど、小さな異変を見つけるのにはあまり向いていない
- 異常時は内視鏡(胃カメラ)の再検査が必要であり、二度手間である
- バリウム(胃部造影剤)の味・飲み方がきつい・苦しい
- バリウムを誤嚥してしまうと気管や肺に炎症が起こってしまう可能性がある
- 発泡剤のゲップを我慢する必要がある
- バリウムによる便秘のリスクがある
- 検査後に下剤を飲んでバリウムを体外へ出すのが一苦労である
- 放射線被ばくのリスクがある
- 妊娠中や妊娠している可能性がある場合は検査ができない
胃内視鏡検査(胃カメラ)とは?
胃内視鏡検査(胃カメラ)とは?
胃内視鏡検査(胃カメラ)は、内視鏡(スコープ)を口もしくは鼻から通し、上部消化管(食道から胃・十二指腸まで)を観察することで、胃の形状や胃の粘膜上に異常(ポリープや腫瘍が疑われる凹凸)がないかを確認する検査です。
検査中は基本的に、ストレッチャーの上で、左側を下にしてリラックスした状態で横になります。内視鏡(スコープ)で胃の中をみますので、凹凸のあらわれない粘膜の荒れなども発見しやすくなり、早期胃がんの発見に関しては、バリウム検査とは到底比較になりません。
バリウムやレントゲンも使用しませんので、便秘や放射線被ばくなどの心配もなく、便秘症の人や妊娠中の人なども受診に関しての制限もありません。一方で、粘膜の下で進行する「スキルス性胃がん」の発見はやや苦手としています。
胃内視鏡検査(胃カメラ)は、内視鏡(スコープ)を通す時に痛み・苦しみがあるイメージですが、最近では鎮静剤を使用することで、検査時に比較的痛みを伴うことなく検査を実施することが可能です(個人差はあります)。
胃内視鏡検査(胃カメラ)ではどんな病気が分かる?
胃内視鏡検査(胃カメラ)は、食道・胃・十二指腸の「がん」疾患や「ポリープ」のほか、胃酸が食道に逆流して起こる「逆流性食道炎」や、胃酸で自らの胃を溶かしてしまう「胃潰瘍」、「十二指腸潰瘍」、サバなどの魚介類に寄生する寄生虫「アニキサス」、「ピロリ菌」などを早期発見することが可能であり、バリウム検査では見つけることが困難な微細な病気を見つけることが可能です。
粘膜の色の変化や凹凸など性状を直接観察することができますので、多くの情報を得ることができ、がんの早期発見にとても有効です。
胃内視鏡検査(胃カメラ)の費用と検査時間は?
胃内視鏡検査(胃カメラ) の費用は、一般的に6,000~10,000円程度と、胃の検査の中で最も高価です。しかし、保険適用で検査する事が可能です。
胃内視鏡検査(胃カメラ)自体は10~15分ほどで終了しますが、鎮静剤を使った場合、受診者はその作用が切れるまで休む必要があります。
胃内視鏡検査(胃カメラ)のメリット
- 初期の胃がんなど、バリウム検査より小さな異変を見つけることが可能
- 便秘や放射線被ばくのリスクがない
- 妊娠中や妊娠している可能性がある場合も検査が可能
胃内視鏡検査(胃カメラ)のデメリット
- 内視鏡(スコープ)を口もしくは鼻に通す時に痛い・苦しい可能性がある
- 胃の検査の中で最も高価
まとめ
「がん」は、2人に1人がかかる病気であり、今や国民病とされていますが、その中でも「胃がん」は年間5万人近くの命を奪い、男性の第2位に入るほど死亡数・罹患数の多い疾患です。
しかし、早期の段階で発見できれば、充分に完治が見込める病気です。そのため、初期の胃がんなど、バリウム検査より小さな異変を見つけることが可能である、胃内視鏡検査(胃カメラ)を選択することを推奨します!
胃カメラは「怖い」や「苦しい」といったネガティブなイメージが強いですが、最近は年々細くなるカメラ、鎮静剤・安定剤の使用といった工夫が重ねられていますので、以前苦しい思いをした方・受けたことがない方もぜひ一度お試しください。
胃がんリスクは特に40代以上の男性で高まる傾向があり、年に一度の受診が推奨されています。40歳を過ぎたら定期的に検査を受診して早期発見・早期治療につなげましょう!
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