貧血とは?WHOによる定義・基準値と種類・分類

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貧血は、めまいや動悸・息切れなどの症状が主な特徴ですが、特に夏は一年の中でも貧血になりやすい季節です。また、「貧血 = 鉄分不足」と思われがちですが、実は貧血と言っても数々の種類があり、それぞれで原因が異なります。

そこで今回は、貧血の定義・基準値・種類をご紹介します!

貧血の定義とは?

貧血とは、「抹消血中のヘモグロビン濃度が基準値以下に低下した状態」です。つまり、貧血とは、診断名ではなく、症候名です。

厳密には、循環血液中の赤血球総量の減少と定義されていますが、その測定は容易に行うことはできませんので、通常は採血を行い、「ヘモグロビン濃度(Hb)」・「ヘマトクリット値(Ht)」・「赤血球数(RBC)」を用いて判断され、ヘモグロビン濃度(Hb)が最も良い指標となります。

ヘモグロビンとは?

ヘモグロビンとは、人間の血液中(赤血球)に含まれる酸素の運搬をしているたんぱく質の一種で、鉄(ヘム)とたんぱく質(グロビン)が結びついたものです。このうち「ヘム」は酸素と結びつく力が強く、全身に酸素を運搬する大切な役割を担っています。血液が赤いのもこのヘムが赤色素を持っているためです。

ヘモグロビン濃度によるWHOによる基準値

引用:病気がみえる

WHOでは、貧血の基準を上記のように定義しています。

高齢になると、健常人でもヘモグロビン濃度(Hb)が低下して、男女差が少なくなります。妊婦は赤血球数・ヘモグロビン量が増加しますが、循環血漿量も著しく増加しますので、相対的にヘモグロビン濃度が低下します。

貧血の原因

引用:病気がみえる

貧血の主な原因は、血液中にある「赤血球の産生減少」・「赤血球消失量の増大」または、その両者の合併による場合が考えられ、赤血球の「産生量 < 消失量」とバランスが崩れ、貧血が生じます。

赤血球の産生減少には、エリスロポエチンの産生低下・造血幹細胞の異常・DNA合成障害・ヘモグロビン合成障害などがあります。

貧血の種類

引用:病気がみえる

貧血は、赤血球分化過程のあらゆる段階での障害により起こります。原因としては、「骨髄における赤血球の産生低下」、もしくは「骨髄・抹消血における赤血球の破壊亢進」が考えられます。

貧血①:再生不良性貧血

再生不良性貧血は、骨髄における造血幹細胞レベルの障害により起こる汎血球減少症であり、骨髄の低形成と抹消血中の赤血球・白血球・血小板の3系統における血球減少を呈します。放置してしまうと予後不良ですが、治療により大幅な予後の改善が期待できます。主な死因は出血や感染によるものです。

貧血②:骨髄異形成症候群(MDS)

骨髄異形成症候群(MDS)は、後天的に生じる異常造血幹細胞によるクローン性疾患です。複数系統の骨髄系細胞が異形成を呈し、臨床的には、無効造血による血球減少と前白血病状態という2つの特徴があります。約1/3が急性骨髄性白血病に移行します。科学療法や放射線療法に続発するものと、原因が不明なものがあります。中高年に好発します。

貧血③:赤芽球癆

赤芽球癆は、赤芽球やその前駆細胞が障害されることにより、貧血をきたす疾患です。抹消血での網赤血球の減少や骨髄での赤芽球減少をきたす貧血を呈します。白血球・血小板系には異常は認められません。

貧血④:巨赤芽球性貧血

巨赤芽球性貧血は、骨髄に巨赤芽球が出現する貧血の総称であり、DNA合成障害に基づく核の成熟障害であり、無効造血が特徴です。RNA・蛋白合成の障害は軽いため細胞のサイズは大きくなり、これにより核と細胞質間の成熟不一致がみられます。

貧血⑤:鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血は、鉄分の欠乏によって、赤芽球のヘモグロビン合成が低下して起こる貧血であり、一般に若年~中年女性に多いのが特徴です。貧血の中では最も頻度が高く、わが国では貧血の約2/3を占め、貧血の種類の中でも最も多い貧血です。原因は、男女共通のものでは、慢性消化管出血・痔出血などが多く、女性特有のものでは、子宮筋腫などによる性器出血・出産による失血・過多月経などが多いです。

貧血⑥:鉄芽球性貧血

鉄芽球性貧血は、ヘム合成障害による鉄分の利用障害が起こり、貧血を呈します。鉄が赤芽球内のミトコンドリア中に蓄積することにより、環状鉄芽球がみられます。小球性低色素性貧血ですが、末梢血では小球性赤血球と正球性赤血球が混在しています(二相性貧血)。MDSによるものが最も多いです。

貧血⑦:サラセミア

サラセミアは、特定のグロビン鎖の生合成が選択的に抑制され、α鎖と非α鎖産生にアンバランスを生じた状態となり、溶血性貧血をきたす常染色体優性遺伝性疾患です。

貧血⑧:溶血性貧血

溶血性貧血は、何らかの原因により赤血球の破壊が亢進(溶血)し、貧血をきたした疾患の総称です。溶血性貧血には、赤血球が循環血液中で破壊される血管内溶血と、脾臓などの網内系で破壊される血管外溶血があります。基本的に正球性正色素性貧血を呈します。

その他:貧血を起こす様々な要因

骨髄の異常からくる難病が「不応性貧血」です。

不応性貧血は、およそ4万人に1人しか発症しないと言われます。血液の細胞自体がうまく作られないことで貧血症状を引き起こし、白血病に移行する危険性が高い病気です。様々な治療が適応しないため不応性貧血と呼ばれており、治療には他人からの骨髄移植のみです。

貧血の鑑別・分類

貧血の鑑別:赤血球数指数

引用:病気がみえる

貧血の鑑別には、「赤血球指数」を用いた分類が有用です。赤血球指数とは、赤血球の大きさと、そこに含まれるヘモグロビン量や濃度を、「ヘモグロビン濃度(Hb)」・「ヘマトクリット値(Ht)」・「赤血球数(RBC)」を用いて計算された値であり、上記のように求められます。

貧血の分類: 小球性低色素性貧血・正球性正色素性貧血・大球性正色素性貧血

引用:病気がみえる

貧血は、「平均赤血球容積(MCV)」と「平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)」を用いて、「小球性低色素性貧血」・「正球性正色素性貧血」・「大球性正色素性貧血」の3つに分類されます。

さらに、それぞれの分類ごとの鑑別疾患は上記の通りです。

二次性貧血

引用:病気がみえる

「二次性貧血」とは、血液疾患以外の基礎疾患に続発した貧血のことを言います。

二次性貧血の中でも、慢性感染症・膠原病・悪性腫瘍によるものを「悪性疾患に伴う貧血(anemia of chronic disease:ACD)、腎疾患によるものを「腎性貧血」と言います。

二次性貧血では、貧血自体の治療よりも、基礎疾患の診断や治療が重要となります。

出血性貧血:急性出血性貧血・慢性出血性貧血

引用:病気がみえる

「出血性貧血」とは、出血のために血液(赤血球)を喪失することで起こる貧血のことです。急激な出血による急性出血貧血と、慢性的な出血の持続による慢性出血性貧血に分けられます。

隠れ貧血:ヘモグロビン濃度

引用:病気がみえる

ヘモグロビン濃度は、貧血の指標となりますが、脱水やむくみなどによる体液過剰などによって血漿量が変化すると影響を受け、みかけの値(隠れ貧血)をとることがありますので、注意しましょう。

出血直後では、血球・血漿が同じ程度失われますので、たとえ大量の出血があっても検査でヘモグロビン濃度が正常値を示すことがあります。

貧血の症状(酸素欠乏とその代償作用)

貧血の症状には、「組織の酸素欠乏に基づく症状」と「それを補うための生体の代償作用に基づく症状」および「赤血球の減少による症状」の3つがあります。

これらの症状は、貧血の経過や基礎疾患・年齢などに影響されます。

慢性に経過する貧血は、短時間に生じる貧血(多量の出血・赤血球破砕症候群など)に比べて症状が強くありません。これは、慢性に経過していく過程で種々の代償作用が働くためです。

貧血では、チアノーゼをきたしにくい傾向にあります。これは、チアノーゼが還元ヘモグロビン5g/dL以上で出現するのに対して、貧血はヘモグロビン総量が減っているためです。

組織の酸素欠乏

  • 頭痛
  • めまい
  • 失神発作
  • 耳鳴り
  • 狭心症
  • 疲れやすい
  • 倦怠感・脱力感
  • 間欠跛行

酸素欠乏の代償

  • 息切れ
  • 動悸
  • 頻脈
  • 心拡大
  • 頸動脈コマ音
  • 収縮期心雑音

赤血球量の減少

  • 顔色不良
  • 眼瞼結膜・蒼白

あなたも貧血かも?貧血の診断・チェックポイント

下記のチェック項目のうち1つでも当てはまれば貧血の疑いがあります。

✔ 疲れやすい
✔ 寝ても疲れがとれにくい
✔ 階段や坂道などで息切れがある
✔ 動悸がする
✔ 顔色が悪い
✔ 脚がむくみやすい
✔ 爪が反りかえる
✔ 普通は食べないものを食べたくなる。(氷や土・砂など)

まとめ

貧血は、鉄分不足による貧血のみではありません。貧血は血液検査をしないとわかりませんので、定期的に検査を受けることが大切です。

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