「痔」は、何気に生活しているつもりでも、知らず知らずのうちになってしまっている人が多く、痔を持っている人の割合は、なんと3人に1人と言われています。また、痔だと思っていたら大腸がんや肛門のがんだったということもあるそうです。
しかし、痔は命に関わることがほとんどなく、デリケートな部分の問題でもあるため、症状があっても受診をためらう方が多い傾向があります。
そこで今回は、痔の原因・症状と自宅でこっそりできる痔の予防・改善法をご紹介します!
痔とは?
「痔」とは、肛門付近にできる病気の総称で、主にいぼ状のはれができる「いぼ痔(痔核)」、肛門の皮膚が切れる「きれ痔(裂肛)」、肛門に膿のトンネルができる「痔ろう」の3種類があります。
その中でも特に「いぼ痔(痔核)」と「きれ痔(裂肛)」の2種類は多く見られ、最も頻度が高いのが「いぼ痔(痔核)」です。「いぼ痔(痔核)」は、患部の位置によって「内痔核」(肛門内側のいぼ痔)と「外痔核」(肛門外側のいぼ痔)に分けられます。
痔の種類(いぼ痔・切れ痔・痔ろう)と原因・症状
痔は、肛門付近にできる病気の総称で、その種類は大きく分けて3つあります。
種類①:いぼ痔(痔核)
「痔核」とは、いわゆる「いぼ痔」と言われるもので、肛門や直腸に静脈がうっ血を起こして、いぼのように腫れる状態の事です。いぼ痔(痔核)は、患部の位置(直腸の境目である歯状線を境に)によって「内痔核」(肛門内側のいぼ痔)と「外痔核」(肛門外側のいぼ痔)に分けられます。
いぼ痔(痔核)の原因
長年にわたる排便習慣(排便時のいきみや便秘・肛門部への過度の刺激など)や生活習慣(排便を我慢する、長時間座り続けるなど)により、直腸や肛門付近の毛細血管にうっ血が生じ、部分的にいぼのように腫れてしまうことが原因です。
いぼ痔(痔核)の症状
内痔核は、排便時の出血のみで痛みはないことがほとんどです。ただし、症状が進むといぼが肛門の外まで出て元に戻らなくなり(脱肛)、血栓や潰瘍・壊死・リンパ浮腫などをきたすと激しい痛みを伴います(嵌頓痔核)。
外痔核は、排便時に肛門部で膨らみますが、出血は少ないです。痛みはあっても鈍痛です。しかし、静脈に血栓ができると(血栓性外痔核)、激しい痛みが起こります。
いぼ痔(痔核)の治療
「内痔核」や「外痔核」の症状があっても、激しい出血や痛みなど普段の生活に支障のない場合は、保存的治療を選択します。激しい出血や痛みなどで日常生活が制限される場合には手術的な治療法(外科的な切除手術、硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸を用いた硬化療法など)を検討します。
外科的な治療法として代表的なものは、結紮切除術です。さまざまなタイプの痔核に対応できる切除術です。硬化療法では、近年では内痔核に対する治療法として、ALTA療法(硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸を用いた硬化療法)が注目され、ALTA療法単独での治療や、結紮切除術との併用が行われています。ALTA療法は術後の痛みが軽く、出血が少ないので入院期間の短縮も期待できます。
種類②:切れ痔(裂肛)
「切れ痔(裂肛)」とは、いわゆる「切れ痔」や「裂け痔」と言われるもので、硬い便や下痢によって肛門(直腸の境目である歯状線より肛門側にある肛門上皮)が切れてしまった状態の事です。
浅い傷の場合、通常は1週間以内に自然治癒しますが、硬い便や下痢を繰り返すと傷の治りを妨げてしまうため、傷が治らずに大きく・深くなるのも特徴です。
切れ痔(裂肛)の原因
硬い便や下痢によって、肛門上皮が切れてしまうことが原因です。
また、最近では、内肛門括約筋(自分では動かすことのできない筋肉)の緊張が高いために、常に肛門が狭い人も増えています。すると、直腸肛門管内圧が高くなった結果、肛門上皮の血流が悪くなり、排便時に強くいきんで無理やり便が通過すると、急に肛門が広がって肛門上皮が切れてしまいます。
切れ痔(裂肛)の症状
硬い便や下痢などの排便時に強い痛みと出血があります。出血は紙に付く程度であり、多くはありません。
状態が進行し、裂肛が慢性化して深くなったり、内肛門括約筋まで炎症が波及すると、排便後も数時間痛みが続くようになります。
切れ痔(裂肛)の治療
まずは、便秘(硬い便)や下痢を改善しましょう。また、注入用軟膏などの外用薬や、局所の血流を改善する内服薬にて肛門上皮の血流を改善します。それでも改善が見られない場合や状態が悪化する場合は、外科的な手術治療を検討します。
外科的な治療法として代表的なものは、側方皮下内括約筋切開術(LSIS)や直接肛門部を押し広げる手法(用手肛門拡張術)です。しかし、外科的な治療法にはいろいろな意見がありますので、手術を受けて改善することよりも、裂肛は早期に保存的な治療を行い、慢性化させないことが大切です。
種類③:痔瘻・痔ろう
「痔瘻」とは、菌が侵入して膿がたまり、それが肛門以外から外に吹き出してしまった状態の事です。
肛門内から皮膚までのトンネルが閉じないと、穴から膿が持続的に出るようになり、この病態を「痔瘻」と呼びます。痔瘻は症状が重く、手術でしか治せないことも特徴です。
痔瘻の原因
歯状線にある肛門陰窩という小さなくぼみに菌が侵入して感染が生じることが原因です。
下痢をすると、歯状線にある肛門陰窩という小さなくぼみに便や細菌が入りやすくなり、便中の汚染物質や細菌がこの肛門腺内を逆行すると感染を生じます。
痔瘻の症状
肛門部の腫れ・痛み・発熱を生じますが、持続的に膿や血液が出ていると強い痛みはほとんどありません。膿を出す(排膿)と、症状は速やかに改善します。
痔瘻の治療
大半は感染にて発生した膿を排出するだけで改善します。その場合は、手術をせずにすみますが、それでも痔瘻・排膿を繰り返す場合は手術治療が必要です。
外科的な治療としては数種類あり、代表的なものは、膿の通り道である瘻管を原発口から原発巣まで切開して開放する「瘻管解放術」や瘻管を原発口から原発巣まで全て切除する「瘻管切除術」・「痔瘻結麗療法(シートン法)」・「括約筋温存手術」などがあります。
それぞれ治療成績と機能温存のいずれを重視するによって治療法が異なります。さまざまな治療法を施行している施設は少ないため、手術前にその違いを十分説明してもらった上で治療法を決定するようにしましょう。
こっそりできる痔の予防・改善法
痔は生活習慣病と言ってもいいほどライフスタイルに深く関わっている病気です。
そのため、お尻に負担をかけないことや便秘や下痢にならないような食生活にするなど、正しい排便習慣を身に付けることで予防・改善が可能です。生活習慣を改善し、痔の予防を心がけましょう。
予防法①:お尻に負担をかけない正しい排便習慣を身に付ける
まずは、以下のような正しい排便習慣を整えることが大切です。
- 排便は3~5分かけて(無理ないきみは肛門に負担がかかり、うっ血の原因となる)
- 排便を我慢しすぎない(直腸が便の水分をどんどん吸収し、硬くなっていくため)
- 排便後にはしっかりと洗浄し、常に肛門を清潔に保つ
- おなかのマッサージで便秘の予防をする
排便時に無理にいきむと、おしりに負担がかかり、うっ血を起こしやすくなります。無理に出そうとせず、出ないときは早く切りあげ、便意を催したときに短時間で排便するようにしましょう。
予防法②:便秘や下痢にならないような食生活を心がける
排便のリズムを整えるためにも、適切な食生活を心がけましょう。
- 朝食をきちんととる(朝食の後は便意が起こりやすいため)
- 水分を十分にとる(一度に飲むのではなく、こまめに摂るようにしましょう)
- 食物繊維を多く含んだ野菜や海草類・乳酸菌ビフィズス菌などを多くとる(便秘や下痢を防ぐため)
- 刺激物は控えめにする(下痢を起こしやすく、肛門を刺激しやすいため)
- 飲酒はほどほどにする(過剰なアルコールは下痢や肛門部のうっ血の原因になる)
- 適度な運動やマッサージを行う
便秘や下痢が続いていると、排泄の度に腸や肛門に負担がかかり、いぼ痔を繰り返す原因になります。まずは、便秘や下痢にならないように、そして、食事や運動・睡眠時間などの生活習慣を見直して、便通をよくする工夫をしましょう。
予防法③:ライフスタイルを整える
痔を予防するのはもちろん、症状を悪化させないためにも、正しい生活習慣を身につけましょう。
- 肛門を清潔に保つ
- 長時間のデスクワークや長時間運転・立ちっぱなしに注意する
- 適度な運動・ストレッチなどを行う(腸の働きをよくし、血行を促すため)
- ストレスや疲労をためないようにする
まとめ
おうち時間の拡大や長時間のPC・スマホ使用に伴い、痔の割合も増加傾向にあります。しかし、痔は命に関わることがほとんどなく、デリケートな部分の問題でもあるため、症状があっても受診をためらう方が多い傾向があります。
痔は生活習慣病と言ってもいいほどライフスタイルに深く関わっている病気です。そのため、お尻に負担をかけないことや便秘や下痢にならないような食生活にするなど、正しい排便習慣を身に付けることで予防が可能です。早期に治療を始めれば、高い治療効果が得られますし、進行させてしまうとQOLを大きく低下させてしまいますので、早めに受診・改善するようにしましょう。
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