血圧・高血圧とは?高血圧の定義・合併症と予後に関係する因子

美容・健康

「高血圧」は、脳卒中や心筋梗塞・腎臓病などの原因となり、日本でも4000万人以上という最も患者数の多い生活習慣病です。

血圧は、脳卒中や心筋梗塞・腎臓病などを予防する上で非常に重要となりますが、高血圧は自覚症状がほとんどありませんので、病気に対する理解や危機感が乏しいのも事実です。そのため、高血圧を、甘く見て放置していると、10年後・20年後には怖い病気になる可能性もあります。

そこで、今回は、血圧の基礎知識から日常生活で日常生活で血圧が上がる原因をご紹介します!

血圧とは?血圧の基礎知識

血圧の定義

血圧とは、心臓から全身へ送り出された血液が血管の壁に与える圧力の事で、心臓が縮んだり広がったりすることで発生します。一般的に言われる「血圧」とは、心臓から血液を全身に送る大動脈など太い血管の壁に与える圧力のことを指します。血圧が上昇すると血管の壁に大きな負荷がかかりますので、命に関わる病気につながる事があります。

血圧の値は、心臓から押し出される血液量(心拍出量)と、血管の収縮の程度やしなやかさ(血管抵抗)によって決まります。

血圧の求め方

血圧(BP) = 心拍出量(CO)(1回拍出量(SV) × 心拍数(HR)) × 抹消血管抵抗(PR)

上の血圧・下の血圧・平均血圧

引用:病気がみえる

上の血圧は、心臓が収縮し血液を勢いよく送り出す時に血管に最も強い圧力がかかっているときの値で、正式には「収縮期血圧」と呼ばれています。下の血圧は、心臓が拡張しているときに一時的に大動脈に蓄えられますが、その時に血管にかかる圧力の値で、「拡張期血圧」と呼ばれています。

心臓から血液は出ませんが、膨らんでいた大動脈が元に戻り、その間もゆっくりと血液が先に送られます。つまり、心臓が1回収縮し拡張するごとに上の血圧と下の血圧が生まれ、血液が身体全体にスムーズに送られるようになっています。

高齢になると動脈が硬くなりやすくなりますので、収縮時の大動脈のふくらみが少なくなります。そのため、上の血圧は上がりやすく、下の血圧は低下しやすくなります。この高血圧のことを、「(孤立性)収縮期高血圧」と呼ばれます。

「平均血圧」とは、心拍動に伴い変化する動脈圧の1周期全体の平均のことを指します。平均血圧は、動脈内にて直接測定する動脈圧曲線を積分して求められますが、間接法による血圧測定で、拡張期血圧に脈圧の1/3を加えて、おおよその平均動脈圧を求めることができます。

正常値と異常値

日本高血圧学会が発表したガイドラインでは、高血圧は下記のように分類されています。

引用:高血圧治療ガイドライン

「正常血圧」は、血圧の値のうち、上の血圧が130mmHg未満、かつ下の血圧が80mmHg未満の場合に診断されます。

「高血圧」は、血圧の値のうち、上の血圧が140mmHg以上の場合、または下の血圧が90mmHg以上の場合、あるいはこれらの両方を満たす場合に診断されます。また、上の血圧が130mmHg以上、下の血圧が80mmHg以上の場合は、注意が必要であり、生活習慣の改善が必要です。

「(孤立性)収縮期高血圧」は、上の血圧が上がりやすく、下の血圧が低下している状態で、上の血圧のみが高い状態のことを指し、上の血圧が140mmHg以上、かつ下の血圧が90未満の場合に診断されます。

高血圧になると、血管の壁に強い負荷がかかり続けますので、血管がボロボロになり(動脈硬化)、脳卒中・心不全・心筋梗塞・腎臓病など重大な循環器系の病気を引き起こす危険性が高まります。

上の血圧は正常で下の血圧だけが高いという人も、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす危険性があります。下の血圧が高い主な要因は、運動不足による肥満と言われています。効果的なのは、ウォーキングなどの軽い運動で、血管が広がり血圧が下がる効果があります。肥満対策にもお勧めですので、1日30分を目標に始めてみましょう。

脈圧

「脈圧」とは、上の血圧と下の血圧の差(脈圧 = 上の血圧 – 下の血圧)のことで、その数値が60以上になると動脈硬化の疑いがあり、注意が必要と言われています。

脈圧は、年齢とともに大きくなっていきますが、下の血圧が低くなるのは動脈硬化の進行が大きな原因と言われています。脈圧が大きくなるほど動脈硬化が進行している可能性が大きくなりますので、脳梗塞や心筋梗塞になってしまい生存率が下がるというデータもあります。”下の血圧が下がっている”という方は、脈圧に注意しましょう。

高血圧の合併症と予後に影響する因子

高血圧者の特徴

日本で高血圧が多い理由として、かつては食塩の過剰摂取が挙げられていました(1日25gの食塩が摂取されていた)。しかし、最近では肥満に伴う高血圧が増加しています。なお、食塩摂取量の目標値は「健康日本21」では、1日6g未満とされています。

高血圧の合併症

高血圧は、脳卒中や心疾患・冠動脈疾患などの循環器疾患の罹患率・死亡率を高めます。また、慢性腎臓病(CKD)の予後を悪化させる要因のひとつでもあります。

収縮期血圧が10mmHg上昇することで、男性では約20%、女性では約15%ずつ脳卒中の罹患・脂肪のリスクが高まると共に、冠動脈疾患の罹患・死亡リスクが約15%増加する研究データもあります。

予後に影響する因子

高血圧の予後は、血圧値だけではなく、高血圧以外の危険因子や臓器障害・心血管病の有無が関係してきます。日本高血圧学会高血圧治療ガイドラインでは、心血管病の危険因子としてメタボリックシンドロームが、予後影響因子として慢性腎臓病(CKD)が追加されています。また、危険因子の中でも糖尿病や慢性腎臓病(CKD)のリスクは特に大きいとされています。

動脈障害と臓器合併症

引用:病気がみえる

高血圧は、さまざまな太さの血管を障害し、臓器障害を引き起こします。また、後負荷増大によって、心臓の左室機能を低下させます。

高血圧の分類(本態性高血圧・二次性高血圧)と家族性要因

高血圧の分類(本態性高血圧・二次性高血圧)

引用:病気がみえる

高血圧は、原因をひとつに定めることのできない「本態性高血圧」と、原因が明らかな「二次性高血圧」に分けられます。

日本人の高血圧の約8~9割が本態性高血圧で、遺伝的要因(体質)や食塩の過剰摂取・肥満など、さまざまな要因が組み合わさって起こります。中年以降にみられ、親が高血圧の場合に起こりやすい高血圧と言えます。食生活を中心とした生活習慣の修正が予防・治療にきわめて大切です。これに対し、二次性高血圧は、①腎臓の働きが悪くなって塩分と水が排出されにくくなる場合、②副腎など内分泌腺の病気によって血圧を上げるホルモンが身体のなかに増える場合や、③血管の病気が原因、④ほかの病気のために使っている薬が原因で起こります。

高血圧は、さまざまな原因で生じますので、原因を明らかにしてそれを取り除くことが、血圧の正常化には大切です。一般的に、二次性高血圧は、本態性高血圧と比べると若い人に多くみられます。

遺伝による高血圧:家族性要因

高血圧には、家族性の要因が60%と言われています。これには、遺伝の要素(遺伝的要因)と、家族で似た生活環境(食塩摂取量が多い、過食や偏食による肥満が多い、運動不足など)にあるという環境要因の両者の可能性が考えられます。

家族に高血圧の人が多い、高血圧の家族歴が強い家庭では高血圧が起こりやすくなりますので、小児期から減塩に努めて、過食を避け、適切な運動習慣を育成するなど、家族ぐるみで高血圧の発症を防ぐことが大切です。また、機会をみて血圧を測るようにし、15歳を過ぎたら年に1回くらいは血圧をチェックすることも大切です。そのような意味でも、病院に行かなくても測ることができる家庭血圧の測定は有用です。

家庭での正しい血圧の測り方

引用:高血圧治療ガイドライン

家庭血圧を上手に用いることで、高血圧による病態を正確に診断する事や、治療の効果をより高めることができます。

測定のタイミング

  • 朝と夜の1日2回、座位で測定します(測った血圧値はすべて血圧手帳に記録しておきましょう)
  • 朝は、起床後1時間以内でトイレを済ませた後。また、朝食前・服薬前に測定しましょう
  • 夜は、就寝直前で、入浴や飲酒の直後は避けて測定しましょう

朝・夜以外にも、職場やその他の活動で血圧が高くなる場合があります。仕事中やストレスの多い時なども血圧を測って、血圧が良好であることを確認してください。ただし、測るときは測定条件を守りましょう。特に、歩いたりした後ではすぐに血圧を図らず、座って1~2分間の安静を保ってから測るようにしてください。

測定のポイント

  • 座った直後で1~2分安静にしてから測定しましょう
  • 手首血圧計より上腕血圧計の使用を推奨(手首に巻くタイプは、値に誤差が生じやすい)
  • カフは心臓と同じ高さにする
  • 厚手の服は脱ぐ(薄いシャツ1枚程度はそのまま)

家庭血圧計は薬局でも家電量販店でも良いのが簡単に購入する事ができますが、血圧計は高血圧の診断と治療に用いられる大事な医療機器ですので、説明書に沿って正しく利用しましょう。

家庭血圧と診察室血圧による高血圧の分類

引用:病気がみえる

家庭血圧を測定し、診察室血圧と比較することによって、「仮面高血圧」と「白衣高血圧」を発見することができます。

白衣高血圧

血圧は色々な条件で変動します。家庭や職場などではいつも正常であるのに、病院の診察室では高血圧の値になってしまう人がいます。このように診察時のみ(白衣の前では)血圧が高くなる例を「白衣高血圧」と呼びます。

これには、診察時に緊張して血圧が上がるなどの理由が考えられますが、家庭血圧が本当に正常であれば、診察室血圧のみが高くても降圧剤による治療の必要は当面ないことがわかってきました。ただし、白衣高血圧は将来、治療が必要な高血圧になる可能性が高いですので、血圧測定は定期的に行うようにしましょう。

仮面高血圧

白衣高血圧と反対に、健康診断や診察の時は正常なのに家庭や職場での血圧が高い人がいます。そのような例を、診察時には高血圧が隠れていることから「仮面高血圧」と呼びます。

この仮面高血圧の人は、診察室血圧・家庭血圧の両方とも高い「持続性高血圧」の人と同じくらい脳心血管病を発症しやすくなりますので、治療が必要です。喫煙者・精神的ストレスの高い人・身体的活動度の高い人・アルコール多飲者は仮面高血圧になりやすくなりますので、意識的に家庭や職場で血圧を測るようにしましょう。

仮面高血圧になりやすい人の特徴は、高血圧と診断されて薬を飲んでいる人にも当てはまり、これは治療が不十分であることを示しています。高血圧治療では24時間にわたって血圧が良好であることが望まれます。診察室血圧が正常でも、早朝などそれ以外の時間帯で血圧が高い場合は、医師とよく相談し、あらゆる時間帯で正常血圧となるよう取り組みましょう。

仮面高血圧の分類

引用:病気がみえる

仮面高血圧は、上記のように分類されます。

朝の血圧上昇と心筋梗塞や脳血管障害の関連性(心血管イベントは早朝が多い)が指摘されており、仮面高血圧の中でも早朝高血圧に最も注意が必要です。

夜間高血圧型を示すことが多い、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)では、夜間の突然死や心血管疾患のリスクが他の時間帯よりも約2倍高いとされています。

仮面高血圧のハイリスク群

仮面高血圧のハイリスク群として、以下のものが挙げられます。該当する例では、積極的に家庭血圧を測定しましょう。

  • 高血圧治療中の高血圧患者
  • 喫煙者・アルコール多飲
  • 精神的ストレス(職場・家庭)が高い
  • 身体活動量が多い
  • 心拍数が多い
  • 診察室血圧が正常値(130/85mmHg以上)
  • 起立性血圧変動異常(起立性高血圧・起立性低血圧)
  • 肥満・メタボリックシンドローム・糖尿病患者
  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
  • 臓器障害(特に左室肥大・頸動脈内膜壁肥厚)の合併症
  • 心血管疾患の合併症

メタボリックシンドローム患者においては、診察室血圧が正常高値血管であっても、30~40%に早朝高血圧がみられます。

仮面高血圧の治療

仮面高血圧の治療は、仮面高血圧の病態を把握し、血圧が上がる時間を考慮する必要があります。治療の目的は、24時間常に血圧が正常値になっていることです。そのための第一歩として、早朝の高血圧の検出・コントロールが重要となります。

長時間に作用する降圧剤を1日1回服用(不十分であれば、朝夕で2回)し、血圧の1日の平均値を下げることを目標にしましょう。また、早朝高血圧を防ぐために、早朝に増悪する交感神経系やレニン・アンギオテンシン・アルドストロン系(RAA系)を抑制する薬などを用いましょう。その際は、就寝前に投与することが有効です。

まとめ

高血圧には分類があり、日常生活の中には様々な血圧が上がる要因があります。高血圧の方は、どの分類に属するのか、どのような行動で血圧が上がるのかを理解して、血圧を上げる要因を治療する事が大切です。

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