足のだるさ・かゆみ・痛み・むくみが気になる方、もしかしたら「下肢静脈瘤」かもしれません。
下肢静脈瘤は、女性に多くみられ、出産後の女性の2人に1人は発症するなど、患者数は1000万人以上と推測されています。立ち仕事や妊娠・出産、加齢などが大きく関係していますが、自覚症状が分かりにくい傾向にあり、足の見た目について美容的な問題で悩まれている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、下肢静脈瘤の原因と症状などについてご紹介します!
下肢静脈瘤とは?
下肢静脈瘤とは、足の血管(静脈)が膨れて太くなり、ぼこぼことこぶ(瘤)のように盛り上がったり、クモの巣や網目状に青や赤の血管が浮き上がったりする病気です。
基本的には治療をしなくても健康を損なうことはありませんし、一般的に進行はゆっくりです。しかし、自然に治ることはありませんので時間と共に徐々に悪化していきます。また、重症化すると湿疹ができたり、皮膚が破れたり(潰瘍)、血栓症などが発生し、治療に難渋する場合があります。
非常に多くの人に発症することが特徴で、40歳以上の10%前後、妊娠・出産経験者の50%に発症するなど、患者数は1000万人以上と推測されています。特に高齢の方、女性に多くみられ、リスク因子として家族での発症や立ち仕事の関与などが知られています。また、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)の後遺症として起こるものもあります。日本人では40%以上の頻度でみられるとされ、日常、最もよくみられる病気のひとつです。
下肢静脈瘤が起こるメカニズム・仕組み
血管には動脈と静脈の2種類があり、足の静脈の役割は、心臓から足に送られ使い終わった汚れた血液を心臓に戻すことです。重力に逆らって足から心臓に血液を送る必要がありますので、静脈の中には逆流防止のためにハの字型の「弁」というものがあります。
下肢静脈瘤は、この静脈の弁の機能が低下しうまく働かないことによって起こる静脈の病気です。弁がきちんと閉まらないために逆流が引き起こされ、下流の静脈に血液が溜まったり詰まったりすると、静脈圧が高くなります。静脈の壁はあまり強くありませんので、伸びたり・曲がったり・膨れたりして静脈瘤となってしまいます。
また、汚れた血液が足に溜まるために、ふくらはぎにむくみやだるさなどの症状が起こります。弁の機能が低下する原因には、加齢や運動不足による筋力低下、妊娠・出産、長時間の立ち仕事、遺伝などがあります。
下肢静脈瘤の種類(タイプ)
下肢静脈瘤には見た目や太さによって種類(タイプ)が異なり、下記の4型が代表的です。
種類(タイプ)①:伏在型(ふくざいがた)静脈瘤
伏在型静脈瘤は、静脈の太さが4mm以上の拡張のタイプであり、表在静脈で最も太い伏在静脈の弁不全によって起こる最も大きな静脈瘤です。大伏在静脈瘤と小伏在静脈瘤の2種類があります。
下肢には皮膚のすぐ下にある表在静脈と、筋肉の間にある深部静脈がありますが、表在静脈は周りの支える組織が強くないので、下肢静脈瘤ができやすくなっています。大伏在静脈瘤は最も多いタイプで、足のつけ根の静脈弁が壊れておこり、大腿部や膝の内側・下肢に大きな静脈瘤が目立ちます。小伏在静脈瘤は比較的少なく、膝の後ろ側の静脈弁が壊れておこり、ふくらはぎに静脈瘤が目立ちます。
ボコボコと大きい静脈瘤が目立ったり、足のだるさやむくみなどの症状がおこり、重症化して外科的な治療が必要になることがあります。レーザー治療、高周波治療、ストリッピング手術、高位結紮&硬化療法などで逆流している静脈を閉塞して治療しますが、最近ではレーザー治療が最も安全で確実に治療できます。従来の手術は今後は次第に行われなくなるものと思われます。
種類(タイプ)②:側枝型(そくしがた)静脈瘤
側枝型静脈瘤は、静脈の太さが3-4mmの拡張のタイプであり、伏在静脈の枝が拡張したもので伏在静脈本幹の逆流がなく孤立してみられます。単独で見られることは比較的少なく、前述の伏在型が合併していないかどうかをよく調べる必要があります。
レーザー治療、硬化療法などで治療できます。この写真のように蛇行している場合は、一般的にレーザー治療やストリッピング手術は有効ではなく、硬化療法が主体となります。
種類(タイプ)③:網目状静脈瘤
網目状静脈瘤は、静脈の太さが1-2mmの拡張のタイプであり、青色の網目状のものが多くみられます。皮膚の直下の静脈が拡張して見えます。
硬化療法できれいに治すことが可能です。レーザー治療は一般的に有効ではありません。
種類(タイプ)④:クモの巣状静脈瘤
クモの巣状静脈瘤は、静脈の太さが1mm以下の細い拡張のタイプであり、紫紅色でクモの巣のように広がって見えますので、目立つため美容目的で治療を希望される場合が多いものです。足全体や太ももの外側・膝の内側やくるぶしによく見られ、中には痛みを伴うことがあります。
細い静脈なのでコブ状ではありません。通常、症状はなく、また重症化しませんので基本的には治療の必要のない静脈瘤です。しかし、外見が気になる方は、硬化療法や体外からのレーザー治療(保険適用外)で治療を行うこともあります。
下肢静脈瘤の原因は?
理由①:加齢による弁の機能低下・筋力低下
下肢静脈瘤は、40歳以上の女性に多く認められ、年齢とともに増加していきます。30歳以上では60%以上の人に下肢静脈瘤が認められたとの報告もあります!
上記の通り、年齢が高くなるにつれ下肢静脈瘤になる頻度は上昇しますが、加齢によって静脈の逆流を防ぐ弁の機能不全や、足(ふくらはぎ)の筋力低下によってポンプ作用がうまく機能しなくなるためです。
理由②:運動不足・肥満
運動不足による足(ふくらはぎ)の筋力低下によってポンプ作用がうまく機能しなくなり、静脈圧の上昇につながります!
また、肥満が直接的に下肢静脈瘤になりやすいかどうかはまだ証明されていませんが、高度な肥満では下肢静脈瘤になりやすいと考えられています。
理由③:妊娠・出産
女性は男性よりも下肢静脈瘤になりやすい傾向があり、女性は妊娠・出産をきっかけに下肢静脈瘤ができやすくなります。
女性は男性に比べて軟部組織が弱いため、静脈弁が壊れやすいということがあります。また、足のむくみやだるさに敏感であることや、美容面でも改善を望まれる方が多い傾向にありますので、男性に比べて病院に行く割合が高いという理由もあります。
また、妊娠時は、女性ホルモンの影響で血管が広がりやすくなること、お腹の赤ちゃんの影響で静脈が圧迫されて血液が心臓に戻りにくくなることなどで、下肢静脈瘤が発症しやすくなります。また、妊娠して腹圧が上がると静脈圧が高くなりやすくなります。多くの方は出産後に自然に改善していきますが、1~2割の方は目立った血管やむくみが残ってしまうという報告もあります。出産回数が増えるほど、出産後も症状が残るようになります。
理由④:立ち仕事
1日に8時間以上立ち続けている人に下肢静脈瘤の発生頻度が高いことが分かっています!
美容師や教師・調理師・警備員など長時間立ったままでいると、静脈のなかの血液はずっと重力の力を受けることになります。そうすると、逆流防止弁に過度な負担がかかり続けてしまい、機能低下につながってしまいます。しかし、同じ立ち仕事でも、途中で歩いたり動き回っている場合には筋肉のポンプ作用が働きますので、こまめに動くように注意しましょう。
理由⑤:遺伝
下肢静脈瘤は非常に遺伝性が高い病気です!
父親や母親のどちらかに下肢静脈瘤がある場合には約40%、両親ともにある場合は約80%発症すると言われています。そのため、もし両親に静脈瘤がある方は、日頃から足の状態をチェックしておき、むくみやだるさなどの症状が強いようであれば早めに受診するようにしましょう。
下肢静脈瘤の症状
- だるさ
- かゆみ
- 痛み
- むくみ
- こむらがえり(夜間・明け方)
- 湿疹・色素沈着・潰瘍(くるぶしの上)
- 出血
下肢静脈瘤は、見た目だけの問題で何も症状がないことが多いのですが、上記のような症状が出ることがあります。
長く立っていると症状が悪化し、逆に脚を上げたり、ふくらはぎをもんだりすると症状が軽くなる傾向がみられます。静脈内に血液がうっ滞して、静脈が拡張することで症状が悪化し、足を少し上げて休んだり、ふくらはぎをもんだりすることでうっ滞をや和らげると症状が軽くなります。
また、これらの症状は長い時間立っている時や昼から夕方に起こったり、右足と左足で症状の程度が違うことが多いのも特徴です。1日中起こったり、他の症状がある場合は、腰部椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの整形外科の病気のことも良くありますので、診断を受けるようにしましょう。
下肢静脈瘤の検査
まずは、下肢静脈瘤の原因がどの部位にあるかを特定することが大切です。静脈瘤になっているところだけを治療しても再発することがあり、超音波検査で静脈瘤が足の付け根(鼠径部)にある静脈(大伏在静脈)か、膝の裏のところにある静脈(小伏在静脈)か、またはそれら以外の静脈(骨盤内や副伏在静脈など)なのかを診断します。
下肢静脈瘤は、超音波検査で静脈の太さや血液の逆流の度合いも診断することができます。
超音波検査(エコー検査)
下肢静脈瘤は、カラードプラ法による超音波検査(エコー検査)で診断が可能です。
超音波検査は、ゼリーをつけて体の表面から静脈の状態を調べます。立ったまま検査を行いますが、身体への負担がなく、痛みがないため繰り返し行うことができます。また、血液の流れが見えますので静脈弁の異常があるかどうかが正確に分かります。
しかし、下肢静脈瘤の初期症状の判断は難しくなりますので、下肢静脈瘤診療の経験の豊富な医師に受けることが大切です。
下肢静脈瘤の治療法
下肢静脈瘤の治療法には、弾性ストッキングを使う圧迫療法、注射で静脈を固める硬化療法、そして手術の3つがあります。手術には、静脈を引き抜くストリッピング手術と、レーザーで静脈を焼く血管内レーザー治療の2つがあります。
下肢静脈瘤は命に関わる病気ではありませんので、症状や超音波検査をもとに、適切でできるだけ負担の少ない治療法を選択することが大切です。
まとめ
下肢静脈瘤は、高齢の方や妊娠・出産後の女性に多いのが特徴です。見た目の美容的な問題で悩まれている方も多くいらっしゃると思いますが、身体的負担の少ない超音波検査(エコー検査)で簡単に診断が可能ですので、気になる方はお近くの病院で検査してもらいましょう!
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